今日は、近美の工芸館に、
移転前の最後の展示を見に行くつもりだったのですが、
このご時世だし、
と思って確認してい見ると、
やっぱり閉館していました。
そういえば、ちょっと前に、
国立の博物館などが閉館になるというニュースがありましたが、
そのときはなぜか、
今日の予定のことと結びつかず……
見たかったんですが、残念です。
で、
仕方ないので(?)、
ゆっくり見られる時に取っておこうと思って残してあった、
『暗殺』
を見てみました。
これも、いわゆる『抗日映画』の1本です。
https://www.youtube.com/watch?v=uHl-OKNgSik
結論から言うなら、
とてもよかったです。
ストーリーの中で、
人物たちの考えや行動が変化し、深まり、
それが、各人物が背負う象徴性の重さに結実してゆくのです。
物語は複雑です。
(で、二度見ました。)
時間的舞台は3つあり、
まずは、1911年、
つまり日本が韓国を併合した翌年。
そしてメインとなる、1933年。
最後が、戦後の1948年、
反民族行為処罰法の時代です。
登場人物も多く、
韓国の解放を目指す闘士たち、
日本におもねり、金儲けと爵位を欲する韓国人ブルジョワ、
韓国を支配する軍人、警察官たち、
つまり総督府の総督である、あの寺内正毅や、
韓国駐留軍の司令官、
そして流れ者の殺し屋(ハ・ジョンウ)、などです。
また空間的な舞台も、
京城、杭州、上海(フランス租界)、延辺付近、満州、
など多様です。
特に、中国領である延辺付近は、
韓国独立運動派の拠点があった場所であり、
青山里戦闘の報復として、
日本軍による朝鮮人虐殺のあった場所です。
物語には、この虐殺によって家族を失った美しい闘士も登場します。
<ネタバレします>あ
物語の中心にいるのは、
イ・ジョンジェ演じるヨムでしょう。
彼は、1911年、独立を目指す闘士として、
あるブルジョワの暗殺を試みます。
しかしこれは失敗。
日本の憲兵に捕らえられた彼は、
拷問の末、日本のスパイとなることで釈放されます。
そして1933年、
司令官とそのブルジョワを暗殺する計画が持ち上がり、
彼はこの計画も日本側に密告します。
ただ彼はこの時、革命軍のボスによって、
スパイであることを見破られます。
彼は独立運動組織を離れ、
今度は、直接ブルジョワなどに情報を提供したり、
表立って日本軍に協力する道を選びます。
それは、金稼ぎの道でもあります。
そして時は流れ、
日本は敗戦。韓国は独立を果たします。
48年には、反民法によって裁判を受けますが、
証人が謎の死を遂げ、
彼は証拠不十分で釈放されます。
が、かつて彼に裏切られたものたちは、
忘れていませんでした……
新興(シヌン)武官学校、というのが登場するんですが、
これは、独立派の、
闘士の養成のための学校です。
暗殺のために呼ばれた3人の中に、
この学校の出身者、チュ・サンオクがいました。
学校の所在地は中国領で、つまり、闘う時は、
「鴨緑江を越えてゆく」のです。
この人物と、ヨムは、似ています。
当初、独立の夢を熱く抱いていましたが、
ヨムは投獄・拷問によって転向、
日本軍の協力者となり、
戦後、それを隠して警察組織の上位にとどまります。
一方チュ・サンオクは、
やはり若い頃独立を熱望し、
その後投獄を経て「現実主義者」に変貌しましたが、
それでも、一旦暗殺の任務にコミットすると、
昔の魂を取り戻したかのように、
命を懸けて戦います。
そして、死んでゆきます。
またここに、請負の殺し屋を並べてもいいかもしれません。
彼は、ハワイ帰りの朝鮮人で、
金のためしか動かなかったのですが、
何の罪もない朝鮮人の少女が、
目の前で日本軍人に殺されるのを見て、
態度が急変するのです。
この「ハワイ・ピストル」と、ヨムの一騎打ちのシークエンスは、
とてもよかった。
対日協力者であるヨムは、
拳銃で相手を撃つのですが、
民族意識に目覚めた「ハワイ・ピストル」は、
最後の力をふりしぼって、
ヨムの胸に、ナイフを突き立てるのです。
この、撃たれても、武器がなくても、抵抗を止めない姿こそ、
韓国の「建国神話」の本質であるように見えました。
小さなことですが、
この映画には、韓国独立運動に協力する日本人も登場します。
こういう人物が一人いるだけで、
映画に奥行きが生まれると思います。
また、日本占領下にあった京城ですが、
ここにあったカフェでは、
音楽が流れ、ダンスを踊り、酒を飲む庶民の姿がありました。
とにかく暗いだけ、つらいだけの生活だったわけではない、
ということなんでしょう。
(もちろんこれは、侵略を正当化するものではありませんが。)
こういう描写もまた、
単純な図式から逃れるのに有効でしょう。
ここでは触れなかった、
重要なサブストーリーもいくつかあります。
もちろんフィクションですから、
そんなうまくはいかないでしょ?
と感じるところもあります。
でも、全体としては、かなりいいと思いました。