2020年3月1日日曜日

3000 nuits

パレスチナ映画、

『ラヤルの三千夜』(2015)

を見てみました。
(わたしが見たのは、
フランス語字幕版の 3000 nuits です。)

https://www.youtube.com/watch?v=i7j3cYat4Fk

見ようかどうか迷っていたところ、
ふとジャケットを見ると、
そこにあったケン・ローチのこの言葉、

Voyez ce film, voyez-le maintenant !

が目に飛び込んできて、
じゃあ見るしかないなと。
で、
たしかに、
とてもいい映画でした。

舞台は、1980年のナーブルス。
(ここは、『シリアの花嫁』に登場するイスラエル係官の息子が、
兵士として派遣されていた場所です。)
爆弾テロ事件に関して、
何も関係なかったにもかかわらず逮捕されたラヤルは、
8年(=3000夜)の懲役刑を受け、
刑務所に入れられます。
(拘置所も兼ねています。)
そこは、イスラエルの「通常」の犯罪者たちと、
パレスチナの政治犯たちが一緒に入れられているのですが、
その待遇の差は歴然としており、
イスラエル人の女性看守たちも、
ラヤルたちには厳しく当たります。
当初、強い政治的意思があるわけでもなく、
ただ早く出たいと思っていたラヤルですが、
刑務所内で出産し、
夫には逃げられ、
「囚人」仲間たちとの関係を築く中で、
次第にパレスチナの政治状況について意識的になってゆき……

注意すべきは、やはり1980という年号です。
実は映画内で、
「サブラー・シャティーラ事件」
(レバノンにおける、パレスチナ難民大量虐殺事件)
のニュースが流れるのですが、
これが1982年です。
そして83年には、PLOがイスラエル人兵士6人を捕虜にし、
捕虜交換の形で、
収監されていた4000人以上のパレスチナ人が解放されます。
(とはいえ、1948以降、
のべ70万人のパレスチナ人が収監されて、
ひどい扱いを受けているのですが。)

映画はほぼ全編刑務所内で進行し、
たしかに重くもあるのですが、
いい映画であることは間違いないと思います。