このところ、
朝鮮族が登場する韓国映画を何本か見ましたが、
今回、
『哀しき獣』(2010)
を見て、
まず最初にこれを見るべきだったな、
と感じました。
朝鮮族自治州の延辺。
タクシー運転手で、
博打好きのグナム。
彼の妻は、韓国に出稼ぎに行き、
幼い娘は、彼の母親が育てています。
ただ、妻の出発のためにした借金と、
博打の負けによる借金で、
グナムはもう首が回りません。
しかも妻は、男でもできたらしく、
一切送金してい来ないのです。
そんなとき、金貸しのボスが仕事を持ちかけてきます。
韓国に行き、ある男を殺してくれば、
借金はチャラにしてやる、
奥さんにも会ってこい、と。
グナムには、もう選択肢はありません。
彼は、手配された韓国への密航船に乗り込みます……
140分という長めの映画で、
4部構成です。
わたしは特に、1部と2部がいいと感じました。
アクションが多くなる後半は、
心理の深まりはやや控えめで、
もちろんアクションそのものと、
謎ときに重点が置かれていくようでした。
その分、やや説明的な場面が増えてゆきます。
前半を終わったところでは、
これは今まで見た韓国映画ではトップクラス、
と思っていたのですが……。
とはいえもちろん、全体としてもなかなかよかったです。
朝鮮族については、
当たり前ですが、
大きな経済格差が背景にあるわけです。
映画はそれを、
たとえば街並みを映すだけで、
きわめて明瞭に語ってしまうわけですね。
もちろん、この映画の物語全体が、
そうした背景の下にあります。
主演のハ・ジョンウは、
『1987』で公安部長を、
また、
朝鮮族のワルのボスを演じていたキム・ユンソクは、
やっぱり『1987』で強面の警察官を、
それぞれ演じていました。
二人ともよかったです。