2020年2月23日日曜日

『哀しき獣』

このところ、
朝鮮族が登場する韓国映画を何本か見ましたが、
今回、

『哀しき獣』(2010)

を見て、
まず最初にこれを見るべきだったな、
と感じました。


朝鮮族自治州の延辺。
タクシー運転手で、
博打好きのグナム。
彼の妻は、韓国に出稼ぎに行き、
幼い娘は、彼の母親が育てています。
ただ、妻の出発のためにした借金と、
博打の負けによる借金で、
グナムはもう首が回りません。
しかも妻は、男でもできたらしく、
一切送金してい来ないのです。
そんなとき、金貸しのボスが仕事を持ちかけてきます。
韓国に行き、ある男を殺してくれば、
借金はチャラにしてやる、
奥さんにも会ってこい、と。
グナムには、もう選択肢はありません。
彼は、手配された韓国への密航船に乗り込みます……

140分という長めの映画で、
4部構成です。
わたしは特に、1部と2部がいいと感じました。
アクションが多くなる後半は、
心理の深まりはやや控えめで、
もちろんアクションそのものと、
謎ときに重点が置かれていくようでした。
その分、やや説明的な場面が増えてゆきます。
前半を終わったところでは、
これは今まで見た韓国映画ではトップクラス、
と思っていたのですが……。
とはいえもちろん、全体としてもなかなかよかったです。

朝鮮族については、
当たり前ですが、
大きな経済格差が背景にあるわけです。
映画はそれを、
たとえば街並みを映すだけで、
きわめて明瞭に語ってしまうわけですね。
もちろん、この映画の物語全体が、
そうした背景の下にあります。

主演のハ・ジョンウは、
『1987』で公安部長を、
また、
朝鮮族のワルのボスを演じていたキム・ユンソクは、
やっぱり『1987』で強面の警察官を、
それぞれ演じていました。
二人ともよかったです。