2020年2月24日月曜日

『アシュラ』

キム・ソンス監督のクライム映画、

『アシュラ』(2017)

を見てみました。


映画の冒頭にある主人公の独白、
この街には「人の面をかぶった獣」ばかりというのが、
中心モチーフと言えるでしょう。
おもしろかったです。

これは偶然なんでしょうが、
『生き残るための3つの取引』と構図が似ています。
つまり、
刑事、
検事、
ワル、
の三角形が中心にあるのです。
で、違うのは、
今回のワルは市長で、
刑事の部分が二人、
つまり、重なり合う2つの輪のようになっている点です。
そして『生き残る~』のほうでは、
3人ともがゲスだったんですが、
今回は、
はっきりゲスなのは市長で、
刑事Aは日和見的傾向があり、
刑事Bは、Aを兄貴と慕うゆえに、
Aに導かれ、そしてAより深く堕ちて行ってしまいます。
そして検事は、
今回は「善」なのですが、
どこかで「獣」に飲み込まれるようです。
(もちろん、ほんとうの獣は、
こんなんじゃないでしょうから、
獣には失礼な比喩です。)

韓国のクライム映画には、
どこかこの、
「結局人間なんて」的なニヒリズムがあるようです。
ある作品はそれに対抗し、
別のものはそれを(結果的に)肯定します。
ではこの『アシュラ』はどうか?
これはまた別の意味でニヒルなのです。
(あえて言えば、無常、とも通じているかも。)

一番のゲスである市長を演じるのは、
ファン・ジョンミンです。
彼の演技はさすがです。

暴力的なシーンもわりとありますが、
「猟奇的」ではありません。
で、お馴染みのミソジニーはと言えば、
これはやっぱり感じられるのでした。