2020年2月15日土曜日

『殺人の追憶』

今を時めくポン・ジュノ監督の、
2003年の映画、

『殺人の追憶』

を(AmazonPrimeで)見てみました。

https://www.youtube.com/watch?v=VqstXpk4K1s

物語の型としては、古典的なものが使われています。
つまり、
ある村(=都会じゃない)で連続殺人事件が起こる、
捜査は難航し、
そこに都会(=ソウル)から優秀な刑事がやってくる。
地元の刑事と都会の刑事の間に、
考え方や捜査方法の違いがあり、衝突する。
ただ、しだいに互いが互いを理解し始め、
事件は解決に向かう……というものです。
1カ所だけ、この型をずらしている部分もありますが。

舞台が1986~87なので、
たしかに社会変動が背景に(少し)あります。
デモもあります。
また、警察による拷問の問題などは、
たしかにこの時期クロースアップされていたことなんでしょう。
ただそれも、
1987に対する真摯なアプローチというよりは、
その状況を物語に利用している感もあります。

ちょっと興味を持ったのは、
都会から来た刑事が4年制大学卒で、
村の刑事が、2年制大学卒と、高校卒だったこと。
そしてこの最後の刑事が、
もっとも拷問を得意としており、
その彼が、学生と喧嘩する場面もあることです。
この刑事は、「民主化」の対極にいたことになります。
その意味では、ラスト近く、
彼が破傷風で足を切断せざるを得なくなるのは、
ある時代の終わりの象徴にも見えます。
(ただ、映像として拷問は描出されていますから、
この設定は、描出することそのものの言い訳にも見えます。)
また、重要な容疑者の一人が、
軍務を終えたばかりであるというのも、
軍の体質を遠回しに指差しているのかもしれません。
(ただ彼には、「足の切断」的なことは起こりません。)

1つ強烈に感じたのは、
映画に流れるミソジニーです。
猟奇的に殺されるのは、みんな若くて美しい女性たち、
という設定は珍しくありませんが、
それを映像で(これでもかと)やると、
そうした嗜虐的な映像そのものを客寄せに使っている感じがして、
やや引きます。

『スノーピアサー』は、わたしにはゼンゼンでした。
今回は、エンタメとして「おもしろい」のは認めざるを得ませんが、
ちょっと、高く評価することはできない感じでした。