2020年2月28日金曜日

『弁護人』

ソン・ガンホ主演で、
ずっと気になっていた映画、

『弁護人』(2013)

を見てみました。
Mmm、ちゃんとしてます。
いい映画でした。

https://www.youtube.com/watch?v=jCpk7bOsEDo

主人公ソン・ウソク
(←ノ・ムヒョン元大統領がモデル)
は、貧困家庭に育ち、高卒で、
肉体労働をしながら独学して弁護士資格をとり、
その後は、
登記や税務などに目を付け、
その仕事で高収入を得、
家族を養い、競技用の小さなヨットまで買います。
いい人間ですが、ノンポリで、
プチブルだったと言うべきでしょう。
けれども、80年代の初頭、
行きつけの食堂の、
かつて世話になった「おばさん」の息子が行方不明になります。
この大学生の息子は、
読書会を開いていたところ、
公安に逮捕され、
その後の拷問によって、
やってもいない罪を自白させられていました。
最初は乗り気じゃなかった仕事ですが、
「おばさん」に懇願され、
ソンはこの大学生の弁護を引き受けることになり……

この物語は、
時間的舞台が「80年代初頭」というのがまず重要。
つまりこれは、
光州事件の後で、1987の前、
というタイミングなわけですね。
つまりこの映画は、
その2つの「事件」をつなぐ物語なのですね。

韓国映画は、
なぜ平均的にレベルが高いのか?
国費でハリウッドに行く制度があり、
多くの才能ある韓国人がそこで映画技法を学び、
それを持ち帰って実際に行使したからだ、
それは韓国の国策だったのだ、
という指摘があります。
それはそうなのでしょう。
ただ、
たとえば日本と比較した場合、
決定的に違っているのは、
政治的な感覚なのだろうと感じます。
この70年、
朝鮮戦争から始まって、
軍事独裁政権や民主化を経験したピープルにとって、
政治的であることはデフォルトであるように見えるのです。
そこが、
もらいものの民主主義を生きる日本とは、
決定的に違う。
そうしたセンスが鍛えられていて、
そこに、映画の技術的側面が流入した時、
必然的に韓国映画の興隆が起こった、
という風に考えたくなります。
(逆に言えば、
今の日本に、どんなに技術的な知識が入ってきても、
(悪い意味で)身近なドラマに終始するだけで、
なにかお腹にぐっとくるような作品は撮れないんじゃないか、
という気さえしてきます。)

ソン・ガンホは、
パク・ウネ政権時代には、
反政府的人物の「ブラックリスト」に名を連ねていたといいます。
この映画や、『タクシー運転手』に出ていれば、
そりゃあの右寄りの政権には嫌われるだろうことは想像がつきます。
(忖度して、すぐにコンサートを中止するような人たちとは、
ちょっとちがうわけですね。)