『アシュラ』がよかったので、
同じキム・ソンス監督のパンデミック映画、
『FLU 運命の36時間』(2013)
を見てみました。
(Amazon Prime の無料映画の中にありました。)
結論から言うと、
とてもよかった。
Le Flic de Belleville の10倍はよかったです。
密航してきた移民たちが、
コンテナの中で死んでいるのを、
斡旋業者の男たちが発見。
どうやら、ウイルス性の伝染病のよう。
しかも、男の一人はいきなり感染してしまい、
もらったウイルスをあちこちでばら撒きます。
パンデミックの始まりです。
恐ろしいのは、
感染から36時間で死んでしまうこと。
そして、致死率が100%であることです。
ただ、
あのコンテナの中には、
たった一人だけ、生存者がいました。
彼はどうやら、抗体を持っているらしいのです。
とにかく、彼を見つけ出さなければならないのですが、
感染は恐ろしい勢いで拡大しています。
物語の主人公である救急隊員のジグにも、
彼が恋している医師イネにも、
彼女の娘のミルにも、
危険が迫ります……
もちろんフィクションですから、
そのまま現実にはならないでしょうが、
比喩としてなら、とてもとてもリアル。
「国家」や「国民」、「大国」の描き方も、冷静です。
ウイルスを持ち込んだのが不法移民だという点だけは、
やや引っかかりますが、
その後の物語においては、
移民を排斥する、
ないしスティグマ化するような点はまったくなかったので、
今回は批判しないことにしておきましょう。
ジグの先輩役として、ユ・ヘジンが出演していて、
相変わらずいい感じ。
また、マ・ドンソクも登場して、
こちらも画面に不穏な感じを波立てる役どころで、
よかったです。
また、医師イネも、その幼い娘も、
「生意気な女性」という設定で、
しかも活躍するので、
今回はミソジニーじゃなくて、
その点もほっとしました。
こんなに男性中心の社会なので、
女性たちは「(男から見て)生意気」に見えなきゃだめだと、
それくらいでちょうどいいと、
わたしは思っています。