2022年3月1日火曜日

「ハウス・オブ・カーズ」・最終シーズン

シーズン6は、
いつもの半分の6話しかなくて、
あっという間に見終わりました。
でも、長かった!
今まで見たドラマで1番長かったんじゃないでしょうか?
トータル時間は、
『スターウォーズ』シリーズより、
『X-Men』シリーズより長いはずです。
たぶん、70時間くらい?

南部の、貧しい家の出身で、
能力と野心の塊であるフランシス・アンダーウッド’=フランク)は、
ユダヤ系(←終わり近くに判明)で、
大金持ちの家に育ったクレアと結婚します。
クレアに求婚するものは他にもいましたが、
二人の中にある「野心」が激しく共鳴し、
前代未聞のカップルが誕生することになりました。
そう、
二人は、1つになった炎のように、
野心だけを駆動力に、
権力の階段を駆け上がっていくのです。
もちろんそれは、簡単な道のりではなく、
駆け引き、脅迫、殺人さえある世界なのです。
そしてやがて、フランクは大統領の座をつかみます。
けれどその頃から、
1つの炎と見えたものが、
徐々に別れ始めるのです。
それは妻クレアが、
自分の誤解に気づいたからでした。
自分たちは一心同体だと思っていたのに、
実は、フランクが主で、自分は従だったのです。
そこからの、覚醒したクレアの「強さ」は見物です。
というのも彼女には、
一般的な「強いヒロイン」が持つ理想や大義がないからです。
彼女は、「人に優しい世界」も、「多様な社会」も、
「インクルーシブなアメリカ」も、望んではいません。
彼女が望むものは1つ、大統領の椅子だけです……

だからクレアは、
新しいヒロイン像を提出していることになるでしょう。
(それが「いい」か「悪い」かは今は措くとして。)
しかも彼女が野望を達成する時、
傍らに「男」はいないのです。
にもかかわらず彼女は妊娠していて、
しかも赤ちゃんは女の子。
そして彼女が招集した閣僚は、全員が女性……
ここには、
かなり強烈な、
男性中心主義社会へのアンチ・テーゼを読み取ることができます。
「愛」や「理想」と結びつけられ、
そうしたものを背負うことで男性社会に対抗していた多くのヒロインたち。
クレアは、彼女たちとは違うのです。

……それにしても、
この政治ドラマはリアルに感じられます。
明らかにプーチンを模した人物も登場し、
その造形も真に迫っています。
(クリントン元大統領は、
「99%本当だ」
と言ったらしいです。)
このところ連日、
サキ報道官の顔を見ますが、
このドラマを見た後では、
あの場面もいままでとはまったくちがって感じられます。
あの会場のすぐ裏にどんな部屋が続いているか、
そこでどんな会話が交わされ、
どんな情報が飛び交い、
どんな風にして発表原稿ができあがっていくか。
ドラマの中では、
何度となく、そんなシーンが出てくるのです。

とにかく長いので、
見るのを勧めることはできませんが、
大河小説を読む気持ちで
(わたしはそうでした)
見続ければ、
得られるものは多いと感じました。