キム・ソンフン監督の他の作品を、
と思って見てみたのが、
『コンフィデンシャル/共助』(2017)
です。
https://www.youtube.com/watch?v=UYMmP9etTwM
北朝鮮の軍人、イム・チョルリョン。
彼は、ある作戦中、
妊娠していた妻を上司に殺されます。
そして偽札の金型を持って逃走した上司を追って、ソウルへ。
そこで、南の刑事カン・ジンテと出会い、
上司の跡を追います……
この監督の大きな特徴は、
ストーリー・ラインがとても明瞭なこと。
見ていて、混乱することがまったくありません。
こんな風にストーリーを語れるというのは、
大きなメリットでしょう。
構図は、タイプの違う二人の刑事が、
最初は牽制し合い、警戒し合いながら、
やがては信頼関係に至るという、
まあ、星の数ほど実践例があるパターンを借りています。
で今回はそれが、
北の、ルックスのいい(とされる)、運動能力の高い、妻を喪った刑事と、
南の、ルックスが悪い(とされる)、うだつの上がらない、家族持ちの刑事、
という対比です。
もちろん、ここに南北が入ってくるのが、
韓国映画ならではです。
(無口なチョルリョンが、
ジンテの家族の前で初めて言葉を発した時、
ジンテの妻と妹は、
驚いて言うのです、
「北の人ですか?」
わたしにはまったく分かりませんが、
それほど、言葉にも違いがあるんですね。)
このタイプのフランス映画で、
わたしが真っ先に思い出したのは、これです。
http://tomo-524.blogspot.com/2013/09/lunion-sacree.html
ユダヤ人とアラブ人、という対比です。
それから、こんなのもありました。
http://tomo-524.blogspot.com/search?q=Les+keufs
で、話を『コンフィデンシャル』に戻すと、
これは十分見ていられるし、
エンタメとしては完全の合格点だと思います。
ただ……
カン・ジンテの妻は、
「口が悪」く、夫を邪険に扱いますが、
一方では、夫の身を案じ、
しかも、夫が望むなら、
彼が危険な場所に赴くときも応援するという、
なかなか「よくできた妻」です。
で、もちろんここが問題です。
映画は、例によってホモソーシャルな世界を舞台としています。
その中に、この妻のイメージを挿入すると、
それは一見、
女性の強さ、深さを描いているように見えながら、
実際は、そのホモソーシャルな世界から排除されたまま、
その世界を信奉する、という役割を振られていることになる気がします。
優秀な韓国映画群の、
わりと頻繁に出会ってしまう傷のように、
わたしは感じました。