2021年3月13日土曜日

『イソケンと二人の王子様』

ノリウッドでもう一本、
と思って(ネトフリで)選んだのが、これ。

『イソケンと二人の王子様』(2017)

なんだかふにゃっとしたタイトルですが、
原題は単に Isoken(←ヒロインの名前)です。


舞台はナイジェリアのラゴス。
イソケンは、ヨルバ人の「いい家」に育ち、
3姉妹の中で一人だけ、ロンドンの大学を出ています。
で今は、バリバリ仕事をし、充実した34歳なんですが、
彼女の母も姉妹も、
早く結婚しろとうるさいのです。
とくに母親は、結婚こそが女性の人生の最重要事だと信じ込み、
ほとんど毒親状態です。
そんなときイソケンの前に、二人の男性が現れます。
一人は、名家の出で、事業に成功し、またやさしく、「完璧」なオセボ。
もう一人は、写真家で、自由で、楽しく、
イソケンの心を解放してくれるケヴィンです。
ただ「問題」は、
ケヴィンがオイボ、つまり白人であることです……

分かりやすい三角関係の物語です。
二人の男性の「タイプ」も対照的で、
これも分かりやすい。
でもこれが、わたしたちにとって見慣れない物語であるのはもちろん、
ケヴィンが白人であることが、
大きな負債であるかのように描出されるからです。
白人と付き合うなんて、白人コンプレックスそのものじゃん?
劣等感の裏返しなのよ、
というわけです。
やっぱりこのあたりが、
一番の見どころだと思いました。

またイソケンの母親の頑迷ぶりも、なかなか印象的。
唐突ですが、
「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」
の中の、ヒロインの母親を思い出しました。
彼女も相当でした。
物語の中には、
しばしば古い価値観を背負う人物が登場するわけですが、
それが母親になるのか、父親になるのかは、
それぞれの文化圏の状況と関係があるのでしょう。
もちろん、頑迷さにも、
いろんな種類があって、
『私たちの青春時代』に出てくる母親は、
フランス的な「エリート」の生き方を強要するところがありました。

この『イソケン』は、見ている間、
映画というよりドラマを見ている感覚になります。
それは、時間の流れが(良くも悪くも)淡々としていて、
凝集や飛躍があまりないからなのでしょう。
潤沢とは言えない予算で作られ、
ある程度の観客動員が必須であるノリウッドの、
それは特徴なのでしょうか?