2021年3月16日火曜日

『26年』

映画のゼミで見せる韓国映画といえば、

『国際市場で逢いましょう』

がなんと言っても筆頭です。
韓国の現代史が、時代ごとにうまく描かれているからです。
ただこの映画、足りないものがあります。
それは光州事件であり、民主化運動であり、北との相克です。
で、それを埋めてくれるのは、

『タクシー運転手 ~約束は海を越えて』
『1987』
『The Net  ~網に囚われた男』

などが有力候補です。
(『愛の不時着』も入れたいところですが、
授業ではムリですね。
ほんとは、こっちのほうがいいと思います。
「北」が、人間的に描かれているので。)
そうそう、『ペパーミント・キャンディー』も重要ですね。


で、今回見た

『26年』


ですが、このタイトル、
光州事件から26年経って、という意味です。
主人公たちは、
それぞれに父、母、姉を事件で喪っています。
そしてそこに、元戒厳軍の兵士が加わるのです……

これは評価の難しい映画です。
前半、主人公たちの動機が説明されてゆく部分は、
事件の重さがずっと響いています。
そして後半、
元大統領の暗殺を企てる経緯では、
アクションやサスペンスが前に出てきます。

ただ、この映画が、韓国ではヒットしたという事実は重要でしょう。
映画の時間的舞台は2006年ですが、
公開当時の 2019年にあっても、
光州事件にまつわる思い、
それはルサンチマンに近いのでしょうが、
そうしたものは消えていないということの、
証明になっているのだと感じられるのです。

韓国映画はやはり、
政治性が強くて、
それは大きな武器であり、
観客にとっては魅力でもあります。
『26年』が名作かどうかは措くとしても、
少なくとも日本では、
半永久的に、
こうした映画は出てこないのでしょう。