2021年3月20日土曜日

Caïd

2017年に制作され、
映画祭で賞も獲ったのに、
どうも配給業者の手違い(!)によって公開されなかった映画、

Caïd

ただ、これに目を付けたNetflix が出資し、
シナリオを書き換え、
ただし同じ出演者で撮り直したのが、
短編シリーズ、

『密売人』

です。
1本が10分弱で、全部で10話。
これが、すごい緊張感で、おもしろかったです。


舞台はマルセイユ近郊。
出所したばかりのトニーは、
ドラッグのディーラーの若きボスであり、
同時に期待のラッパーでもあります。
そして物語は、
彼の新曲のMVを撮影、という枠組みの中で展開します。
そう、たまたまヴィデオの撮影に来た二人が、
一人はいわば立会人として、
もう一人はその記録者として、
物語を見届けてゆくわけです。
この点が、この作品の最大の魅力となっています。

監督は、インタヴューにおいて、
優等生的な発言(「悪の道を否定することがテーマです」)をしていますが、
もちろんこの映画の魅力はそんな教訓ではなく、
いわゆる映画的なスリリングさにあるのでしょう。

そしてもう一つ、映画の魅力を下支えしているのが、
音楽です。たとえば、


かっこいい。Wawawa♫

視線の問題というのは、
小説でも映画でも避けて通れませんが、
この映画は、それを考える材料にもなるのでしょう。
観客の視線と物語の間にはカメラがありますが、
それは、ここでは、物語の一部なのです。