映画祭で賞も獲ったのに、
どうも配給業者の手違い(!)によって公開されなかった映画、
Caïd
ただ、これに目を付けたNetflix が出資し、
シナリオを書き換え、
ただし同じ出演者で撮り直したのが、
短編シリーズ、
『密売人』
です。
1本が10分弱で、全部で10話。
これが、すごい緊張感で、おもしろかったです。
舞台はマルセイユ近郊。
出所したばかりのトニーは、
ドラッグのディーラーの若きボスであり、
同時に期待のラッパーでもあります。
そして物語は、
彼の新曲のMVを撮影、という枠組みの中で展開します。
そう、たまたまヴィデオの撮影に来た二人が、
一人はいわば立会人として、
もう一人はその記録者として、
物語を見届けてゆくわけです。
この点が、この作品の最大の魅力となっています。
監督は、インタヴューにおいて、
優等生的な発言(「悪の道を否定することがテーマです」)をしていますが、
もちろんこの映画の魅力はそんな教訓ではなく、
いわゆる映画的なスリリングさにあるのでしょう。
そしてもう一つ、映画の魅力を下支えしているのが、
音楽です。たとえば、
かっこいい。Wawawa♫
視線の問題というのは、
小説でも映画でも避けて通れませんが、
この映画は、それを考える材料にもなるのでしょう。
観客の視線と物語の間にはカメラがありますが、
それは、ここでは、物語の一部なのです。