白石和彌監督の作品、
『凶悪』(2013)
を見てみました。
彼がブレイクを果たした作品という位置づけのようです。
これはベストセラーになったノンフィクションの脚色です。
須藤という死刑囚がいて、
彼が獄中から、「先生」の犯罪を告発します。
自分が死刑なのに、
その自分を操っていた「先生」が、
シャバでのうのうと暮らすのは許しがたい、
というわけです。
とりわけ須藤は裏切られることを嫌う人間であり、
彼にとっては、
もっとも重大な局面で裏切り続けていたのが「先生」なのです。
で、彼の告発に答えるのが、若い編集者、藤井。
彼の中には、いつか、
須藤のそれをもしのぐ執念が巣くっていき……
いい作品でした。
新人の2作目だと思うと、恐るべし、というほど。
ただ、『孤狼の血』と比べると、
映画の豊かさというか、
複雑な要素の渾然一体感という点では、
一歩譲るかも知れません。
また、わたしの印象では、
記者・藤井の人間性が、今ひとつはっきりしない。
彼の無表情も、もちろん意図的にそう演出しているわけですが、
ちょっと単調。
妻との関係も納得いかないし、
そもそも妻が、この夫を好きでい続けられる理由がわからない。
妻を、藤井の行動に対するアンチとして設定しているのはわかりますが、
彼女の扱いがやや表面的だと感じました。
……と書きましたが、
いい映画であるのは間違いないと思います。