2021年9月2日木曜日

『凶悪』

昨日に続いて、
白石和彌監督の作品、

『凶悪』(2013)

を見てみました。
彼がブレイクを果たした作品という位置づけのようです。


これはベストセラーになったノンフィクションの脚色です。
須藤という死刑囚がいて、
彼が獄中から、「先生」の犯罪を告発します。
自分が死刑なのに、
その自分を操っていた「先生」が、
シャバでのうのうと暮らすのは許しがたい、
というわけです。
とりわけ須藤は裏切られることを嫌う人間であり、
彼にとっては、
もっとも重大な局面で裏切り続けていたのが「先生」なのです。
で、彼の告発に答えるのが、若い編集者、藤井。
彼の中には、いつか、
須藤のそれをもしのぐ執念が巣くっていき……

いい作品でした。
新人の2作目だと思うと、恐るべし、というほど。
ただ、『孤狼の血』と比べると、
映画の豊かさというか、
複雑な要素の渾然一体感という点では、
一歩譲るかも知れません。
また、わたしの印象では、
記者・藤井の人間性が、今ひとつはっきりしない。
彼の無表情も、もちろん意図的にそう演出しているわけですが、
ちょっと単調。
妻との関係も納得いかないし、
そもそも妻が、この夫を好きでい続けられる理由がわからない。
妻を、藤井の行動に対するアンチとして設定しているのはわかりますが、
彼女の扱いがやや表面的だと感じました。

……と書きましたが、
いい映画であるのは間違いないと思います。