『日本で一番悪い奴ら』(2016)
を(ネトフリで)見てみました。
この映画は、
20年前、北海道警察で実際にあった「稲葉事件」、
に基づいたフィクションとのことで、
タイトルによって指さされているのは、
映画には現れない道警の上層部、ということなのでしょう。
本人によれば、「柔道と喧嘩しか能がない」諸星は、
その柔道を買われ、道警に就職することができました。
その後、ピエール瀧演じる先輩の忠告に従い、
「点数」を稼ぐことに専心します。
(たとえば、殺人犯を逮捕すれば18点です。)
そののめり込み方は尋常ではなく、
しかし、これが当初は功を奏し、
諸星はあっという間にすすき野の「顔」になってゆきます。
暴力団内に多くの「S(スパイ)」を抱え、
彼らの情報により次々と「ホシ」を挙げてゆくのです。
道警の方も、そんな彼を利用し、
違法捜査を押しつけることで、
自分たちの実績を上げることに夢中になります。
ただ、この諸星と道警の「蜜月」も、
長くは続きませんでした。
諸星が信用していたSが、彼を裏切り……
悲しいのは、
道警から与えられた数々の賞状を、
諸星が部屋に飾っていることです。
彼は、自分が、
大きな権力構造の中のコマであることに気づくどころか、
「エース」というアイデンティティーに有頂天になり、
いわば「自発的隷従」を強化していくのです。
映画は、ラストに「メッセージ」を置くことで、
ある種の倫理性を担保しようとし、
それはある程度納得いくものではあるのですが、
映画としての醍醐味は、
諸星がのめり込んでゆくそのドライブ感であり、
ちょうどその裏面に当たる、
諸星の哀れさなのでしょう。
飽きる部分は一切なく、
最後まで一気に連れて行かれました。
もっと見てみます。