『凪待ち』(2019)
です。
なかなか重い、そして見ているのが辛い映画でした。
いい映画、と言っていいかなと思うのですが、
ストーリーの展開のさせ方が、
なんというか、オセロのようで、
表が裏に、裏が表に、
ということが、さまざまな「糸」において繰り返されます。
その感じが、
やや、作家の「手」が見える感じではあります。
徹底的に、と考えたのでしょうが、
それがかえって、
「手」の存在を際立たせる結果になったというか。
背景に置かれているのは、東日本大震災です。
肉親が流され、
美しい海が失われ、
引っ越した先で「ばい菌」扱いされ、
いまだ除染は終わらず、
そこには反社会勢力が関わっている……
このあたりは、背景としてうまく機能していると感じました。
かりにこの「背景」が主人公だとすれば、
物語上の主人公であるギャンブル依存症の男は、
その案内人のようでもあります。
ものすごく勝手なことを言うなら、
もう少し「要素」を減らして、
なんというか、
「美しい風」みたいなものを時折吹かせてくれると、
もっと豊かで、
日常性に接近する作品になったかなと思います。
ほんとに勝手な感想ですが。