2021年9月9日木曜日

『凪待ち』

白石監督作品、6本目は

『凪待ち』(2019)

です。


なかなか重い、そして見ているのが辛い映画でした。
いい映画、と言っていいかなと思うのですが、
ストーリーの展開のさせ方が、
なんというか、オセロのようで、
表が裏に、裏が表に、
ということが、さまざまな「糸」において繰り返されます。
その感じが、
やや、作家の「手」が見える感じではあります。
徹底的に、と考えたのでしょうが、
それがかえって、
「手」の存在を際立たせる結果になったというか。

背景に置かれているのは、東日本大震災です。
肉親が流され、
美しい海が失われ、
引っ越した先で「ばい菌」扱いされ、
いまだ除染は終わらず、
そこには反社会勢力が関わっている……
このあたりは、背景としてうまく機能していると感じました。
かりにこの「背景」が主人公だとすれば、
物語上の主人公であるギャンブル依存症の男は、
その案内人のようでもあります。

ものすごく勝手なことを言うなら、
もう少し「要素」を減らして、
なんというか、
「美しい風」みたいなものを時折吹かせてくれると、
もっと豊かで、
日常性に接近する作品になったかなと思います。
ほんとに勝手な感想ですが。