2021年8月9日月曜日

『柔らかい肌』

トリュフォーの、1964年の作品、

『柔らかい肌』

を、学生時代以来、40年ぶり(!)に見てみました。
(といっても、アマプラを内をぶらぶらしていて、
ふと目にとまったので、
勢いでそのまま見た、というだけのことなんですが。)


有名な評論家ピエール・ラシュネ。
彼は、パリの高級アパルトマンで、
妻や、まだ幼い娘と暮らしています。
(住み込みらしい?ベビー・シッターもいます。)
そんな彼が、講演旅行にリスボンに出かけた際、
あるフライト・アテンダントに一目惚れし、
また彼女、ニコルの方も、
実はこの評論家のファンだったことから、
「浮気」が始まります。
そしてピエールはどんどんニコルに嵌まっていき、
ニコルとの旅行が妻にばれたのをきっかけに、
もうニコルとの結婚まで突っ走る勢いです。
が、
実はニコルは「浮気」を楽しんでいただけで、
結婚なんて考えてもいませんでした。
一方、夫を愛しながら裏切られた妻は、
猟銃を持ち出してピエールに会いに行きます……

Mmm、どうなんでしょうねえ。
世評の高い映画で、
たしかにニコルはきれいだし、
サスペンスもほどよく作られているのですが、
好きかと言われれば、そうでもない、という答えになるでしょう。
まず、この映画は、
お金のあるインテリの物語で、
まあ、お気楽ね、という印象があります。
アルジェリア戦争が終わって2年ですが、
そういう雰囲気はまったく感じません。
ピエールは、バルザック、ジッド、の話をして、
モーツァルトについての文章も褒められたりします。
「ハイブロー」な生活なんでしょう。
また、描かれるのはいわゆる三角関係なんですが、
男(ピエール)が惰弱で、
映画はその惰弱さを突き放すのではなく、
擁護しているように感じます。
ナルシスティック、と言えば言えそうです。
そして女性ふたりの一方は、
美しいけれど身勝手で、
他方は、直情径行で危険、という風に描かれます。
ミゾジニー、ないし女性恐怖の匂いがします。
とても有名な作品なので、
こうした指摘はすでにあるだろうと思いますが……

あと1点、
繰り返し挿入される音楽の、
なにかがほぐれてゆく感じは、
この映画に流れるものと合っていないと感じました。

1964年と言えば、
もちろん東京オリンピックの年です。
シトロエン、飛行機、テレビ、など、
時代の小物も使われています。