作品の構図には、
(まあ、主演の二人が同じなので)
<1>と近い部分もありましたが、
結論としては、なかなかよかったです。
作品を貫く苦さが、人間の弱さと深く共鳴していて、
それをムリに説明しようとせず、
ザッと投げ出してしまうところも
わたしは好きでした。
今回は、
ヘルシンキだけではなく、
フィンランド湾を挟んだ対岸のタリン(エストニア)も舞台になります。
その2つの港町を往復する船も。
さらには、サーレマー島(エストニア)、
もちろんエストニア人も登場します。
フィンランド人と彼らは、英語で話したりします。
(わたしたちが、中国人や韓国人と英語で話す感じでしょう。)
以下ネタバレ**********************
さっき「苦い」と書きましたが、
それもまた、いくつかの形で現れます。
ソフィアの、そして相棒ヌルミの、
個人生活にまつわるものが出発点です。
まずソフィアが抱え込まざるを得ない問題は、
亡き夫の連れ子であるヘレナが関わるものです。
実は、麻薬常習者である彼女は、
あるとき、死んだ売人が隠していたクスリを盗み、
それを売りさばこうとします。
それだけでも相当ヤバイのに、
死んだ売人の仲間が現れ、ヘレナは窮地に。
しかも、彼との「仕事」を強制された彼女は、
ついに、彼を殺してしまうのです。
自分が警官であるのに、
娘から殺人を犯したと告白された時の気分て……。
でもソフィアは、自首しろなんて言いません。
ゼッタイ誰にも言っちゃダメとかたく言いつけ、
実際隠し通せるかに見えたのです。が、
やはりそうは問屋が卸しません。
ヘレナは容疑者として連行されるのですが、
それを担当したのは、
なんと、ソフィアが愛し始めているかもしれない相棒、
ヌルミだったのです。
Mmm、おそろしく苦いです……
刑事物として、
子供が何かひどいことをやらかす話は、
今までにもあったでしょう。
ただ、刑事が女性であり、
子供が娘であり、
犯行を暴くのが同僚、というのは、
見たことがないような気がします。
そう、ソフィアだけでなく、
ヌルミにとっても、かなり苦い経験でしょう。
彼にとって、ソフィアは命の恩人でもあるのです。
ただ急いで付け加えますが、
この作品にミソジニーの気配はありません。
ただ、凍てつく街に、人の営みがあり、
否応なく、苦さを噛みしめることになるのです。