2022年1月10日月曜日

『ふたりの人魚』

昨日に続いてロウ・イエの作品。
彼にとっては第3作に当たる

『ふたりの人魚(2000)

です。


ファンタジーのようでいて、
厳しく現実を捕らえてもいる、
よくできた映画だと思いました。
さすが、有名作品です。

まず、大きな特徴の1つが、
ナレーターでもある「俺」の姿が映し出されることはないこと。
彼は、頼まれれば何でも映す、
日雇い的なヴィデオ・カメラマンで、
この彼のヴィデオ・カメラを通した映像は多用されるんですが、
そうなると、
撮っている彼は映らないわけですね。
で、
「俺」は、あるバーのアトラクションに登場する人魚を撮ることを、
その店の主人から依頼されます。
そしてやがて、この人魚を演じるメイメイと「俺」は、
付き合うようになってゆきます。
そこに、若い男が一人現れます。
彼は、頼まれれば何でも運ぶ
日雇い的な「一人バイク便」のような仕事をしているのですが、
かれはメイメイを見て、
君はムーダンなのに、
どうして知らない振りをするのか、
と問い詰めます。
実はこの運び屋とムーダンなる女性の間には、
ある物語がありました……

メイメイはほんとにムーダンなのか、
というのが、
1つの大きなサスペンスを作ります。
これには、はっきりした答えが用意されていて、
曖昧な雰囲気で終わりはしません。

そして、複数の物語の発端も、
その展開も、結末も、
すべてくすんだ蘇州江(上海)周辺を舞台としています。
(途中、1998、という掲示が見えましたから、その時代です。)
この風景が、
「俺」の撮る揺れる映像とマッチして、
土地と時代の空気を伝えてくるように感じます。

わたしは、
『パリ、ただよう花』を、あまり評価していないのですが、
昨日の『スプリング・フィーバー』といい、
今日の『ふたりの人魚』といい、
予想よりもずっといいデキでちょっと驚きました。
『パリ、ただよう花』、
もう一度見直す必要があるでしょうか?