2022年1月25日火曜日

『パリ、夜の医者』

エリ・ワジュマンと言えば、
この2作を見ました。



特に前者はよかったので、
第3作も期待しました。
これです。

『パリ、夜の医者』(2020)


(実はアマプラにもあります。有料ですけど。)

ミカエルは「夜の医者」、
つまり、夜、手当てを必要としている人を訪問診療する医者です。
人道的、と言っていいでしょう。
彼には妻と、とても可愛い幼い娘が二人います。
が、あまりに夜家にいないので、
妻とはギクシャクしています。
ユダヤ人であるミカエルには、
いとこのディミトリがいます。
彼は薬局を経営しながら、
裏では、ジャンキーのためにクスリを流しています。
で、このクスリに必要な処方箋を、
ミカエルに書かせています。
ディミトリの背後には、マフィアがいるようです。
また彼の薬局で働く女性ソフィアは、
ミカエルの愛人でありながら、
ディミトリのプロポーズを受けるのです……

ミカエルは善人で、行動力もある。
ただ、優柔不断で自己チューなせいで災いを招き、
それに苦しむわけです。
ただ、このミカエルに、
感情移入するのは難しかったです。
となると、映画自体に入り込むのが難しくなり……

ワジュマンの作品としては、
イマイチだったということになるでしょう。
ミカエル役のヴァンサン・マケーニュは、
もともとあまり好きな俳優じゃありません。
でも、今回はいいかな、と最初は思ったんですが、
やっぱり……

ただ、ソフィア役のサラ・ジロドーだけは印象的でした。
他の作品も見てみたいです。

****************

追記:
この映画のことを考えていて、
少し評価が変わりました。
さっきふと、
この主人公は「キリスト」がモデルなのかも、と気づきました。
彼の、善人としての側面が、です。
で、
彼の、きわめて俗な側面、
これが「人間」なのだとすると、
ミカエルは、「キリスト」であり「人間」であるという、
二重性を象る人物だということになります。
この解釈は、外れていないように感じます。
ここから、さまざまなシーンの意味づけもできるでしょう。

映画としておもしろいか、と言われるとビミョーですが、
なかなかチャレンジングな作品なのかもしれません。
ラストでは、聖と俗がぶつかり……