白血病の幼い娘を一人で育てるダンサーを演じていた、タン・ジュオ。
強さも、
身を捨てる感じも、
慈しむ面もあり、
なかなかよかったので、
(ま、役そのものの良さもあるんですが)
彼女のデビュー作、
『スプリング・フィーバー』(2010)
を見てみました。
この映画、
実は随分前からアマプラの「マイリスト」に入れていた作品です。
というのも、ロウ・イエ監督が、
『パリ、ただよう花』
と同時期に作った作品なので、
ちょっと気になっていたのでした。
いい機会なので、今日はこれを。
舞台は南京。
人間関係は、少しだけ複雑。
中心にいるのは、ジャン・チョンというハンサムなワカモノです。
旅行会社で働く彼は同性愛者で、
恋人はワン・ピン。
ただこのワン・ピンには、教員の妻がいて、
彼女にとって彼は「理想的な夫」なのでした。
でも、やはり、彼女は夫の「浮気」に感づき、
定職のないワカモノ、ルオに調査を依頼します。
そして結果は……です。
妻はショックを受け、激怒し、
一方ルオはといえば、
恋人リー・ジン(タン・ジュオ)がいるのに、
ジャン・チョンと深い仲になってゆきます。
(ルオはバイなのです。)
とはいえリー・ジンもまた、
別の若い男性とベッドをともにしているばかりか、
勤め先の工場長とも、
単なる仕事上の付き合いではないようなのです……
というわけで、
複数の相手と付き合う人間が多いので、
なんというか、2つの「手」を持つ原子がくっつくみたいに、
関係は滑るように伸びてゆくのです。
で、
これは誰でも抱く印象でしょうけれど、
これらの人物たちはみな、
さまよっているように見えます。
この「彷徨」が、ロウ・イエのテーマであるのは明白でしょう。
南京という地方都市が、
この「彷徨」に現実感を与えています。
なので映画を見ていると、
こちらも滑るように、
彼らの彷徨と同調していきます。
それが、ここで用意されている映画的体験なのでしょう。
というわけで、
なかなかいい作品だと思いました。
むしろ、『パリ、ただよう花』よりも。