ルル・ワン監督の映画、
『フェアウェル』(2019)
を見てみました。
「アメリカ映画」扱いですが、
映画の90%以上は、中国の長春を舞台としています。
物語はシンプルです。
長春にいるナイナイ(←「祖母」の意)には、
二人の息子がいます。
ただ、長男夫婦と息子は日本に、
次男夫婦と娘はアメリカにいて、
なかなか会う機会はありません。
でナイナイは、居候のおじさんと暮らし、
近所にいる妹とも頻繁に行き来しています。
そんな中、ナイナイが「余命3ヶ月」との診断を受けます。
この知らせは親戚中に衝撃をもたらしますが、
そこは中国の慣例に従い、
ナイナイ本人にはこの知らせを知らせないという選択をします。
ただ、みんなナイナイには会いたいので、
長男の息子の結婚式を長春で行なうことにし、
それを理由に親戚たちが、
日本から、アメリカから、長春に集まってきます……
というような書き方をしましたが、
実は、この映画の主人公は、
次男の娘であるビリーです。
6歳で両親と渡米し、今31歳になった彼女はおばあちゃん子で、
今回のことにひどく心を痛めますが、
そこはアメリカ育ち、
知らせを伝えないなんてありえる?
と考えてしまうわけです。
今日本では、もう、
伝えるか伝えないかなんて、考えもしませんね。
医師も、どんどん説明してきちゃうし。
ただこうした日本の状況は、
一般的な中国人からは、
「薄情」に見えるんだと、
今日、中国語の林先生に教わりました。
そうなんですね。
細かな点にも、興味深いものがありました。
たとえば、結婚式のシークエンス。
始まりはいわゆる中国風で、
食事も大きな蟹が出てたりするんですが、
ビリーと父親は、余興として、
Killing me softly を歌うのです。
また別の女性は、クラシックの歌曲を歌ったり。
なんとなく、
もっと中国的なもので統一されているのかと思っていましたが、
そうでもないんですね。
あと、よくは分からないんですが、
あるホテルの常連客で、
若いビジネス・ガール風の女性たちを連れた男たちを、
ビリーがじっと見据えるシーン。
これも、ここだけで、
故郷に帰ってきた移民の違和感が表現されていて、
上手いと思いました。
静かで、いい映画でした。
来週のゼミでは、これを見せようと思います。