2022年1月31日月曜日

『アンオーソドックス』

ネトフリ初の、イディッシュ語をメインにしたドラマ、

『アンオーソドックス』(2020)

を見てみました。
4話で完結なので、一気に。


ブルックリンの有名なユダヤ人地区であるウイリアムズバーグ。
この街の、超正統派のコミュニティで育ったエスティは、
17歳で、言われるがまま結婚し、
けれどもその生活は息苦しいばかりで耐えられず、
ついに19歳の時、
ある事件をきっかけにコミュニティを離れ、
ベルリンに逃げてゆきます。
そこには、かつてコミュニティから追放された、
彼女の母親が暮らしているのです。
そしてその後エスティは、
ベルリンの音大の学生たちと仲良くなり、
なんとか新たな生活を切り開こうとしますが、
そこにブルックリンから、
夫と、そのやさぐれたいとこが彼女を探しに来て……

とても引き締まったきれいな映像で、
まずは、とても正確に再現されたという(←メイキングも見ました)
超正統派の生活、とりわけ結婚式など、興味深かったです。
いままでにも、
少なくない「ユダヤ映画」を見てきたので、
すべてが初めてというわけではありませんが、
それでも、やはり新鮮でした。

(これもウイリアムズバーグでした。

ドラマの骨格は、
アンオーソドックス(=異端)であるコミュニティと、
その外の世界の対立です。
それはもちろん、価値観の、慣習の、
過去や未来に対する態度の、違いでもあります。
超正統派のラビは、
出エジプトの時代から、ポグロム、ナチスまで、
どれほど自分たちが苦難を生きねばならなかったかを語ります。
明らかにこうした認識が、
彼らのアイデンティティーの根本にあります。

また、このドラマにおける超正統派コミュニティは、
「古い」コミュニティの代表であり、
その意味では比喩的な価値も帯びているでしょう。
「子どもはまだか? ちゃんとセックスはしてるのか?」
としつこく訊いてくる姑は、
韓国ドラマなどでもおなじみのキャラだし、
マザコン男はどこにでもいるでしょう。

で実は、このドラマの2つの世界を股にかけているのは、
モシェという人物です。
ギャンブルや「女遊び」にも精通した彼は、
一方で戒律をきちんと守ろうとする部分もあります。
妻子とは離ればなれで、借金を抱え、
「嘘つき」で、執拗で、銃さえ扱うのですが、
分析対象としては、
一番おもしろい存在かもしれません。