BD作家として知られるニーヌ・アンティコの、
初めての長編監督作、
『プレイリスト』(2020)
を見てみました。
(←監督インタヴュー。おもしろいです。)
いわゆる「ストーリー」があるわけではなく、
ヒロインの日常の葛藤が、
エピソードの連鎖として描かれてゆきます。
ソフィ(サラ・フォレスティエ)は28歳。
イラストレーター志望ですが、
美術教育は受けておらず、
ホールスタッフとして働く今、
この夢を追い続けていいのかどうか、
深く迷っています。
また一方では、
同じビストロで働くシェフと1年付き合い、
妊娠して別れ、
その後も恋人探しは続きます。
タイトルの「プレイリスト」は、
第一義的には、
彼女が関わった男たちのリストだと言えるでしょう。
MFFFの紹介に、
「ヌーヴェルヴァーグへのオマージュ」とあり、
ちょっとイヤな予感がして、
それは部分的は当たってしまったのですが、
トータルとしては、
すんなり最後まで見られました。
その最大の理由は、
サラ・フォレスティエ魅力です。
わたしはとても好きな俳優です。
ラスト近く、
ソフィがカレシ(?)とPCを見ている場面があります。
どうやら映画のようなんですが、
注意して聞くとそれは日本語で、
さらに注意して聞くと、
この映画でした。
溝口ファンなんでしょうね。
それから1つ、字幕に関して分からないことがありました。
ソフィが男と別れることになるシークエンスです。
ソフィが男に向かって、
「Je t'aime. って言ったでしょ?」
というと、男は、
「おれは J'éteins.(わたしは消します) て言ったんだ。
で、電気を消したんだ。」
と返すのです。
別に問題ないように見えるんですが、
この J'éteins. の部分の字幕が、
「ゴミに虫が」
となってるんです。
これは、なにかモトネタがあるんだと思いますが、
それが分からないので、驚いたわけです。
なんなのでしょう?
そう、字幕についてはもう1点。
ソフィがまた別の男と話すシーン。
ここで、男は言うのです……
codes de la bienséance「礼儀」は大事、
ナディーヌ・ドゥ・ロスチャイルドも言ってるとおり。
ところで、
galanterie はどう?
ドアを開けといてあげる、とか。
女性たちはイヤな顔して、そんなの macho だって言うけど。
これって、misogyne なのかな?……
ここはそれなりに論理的に展開し、
かつてフランス女性に、荷物を持ちますよ、と言った時、
あら、machoなんですね、と、
からかう感じで言われたのを思い出したりしたんですが……。
すごく工夫して訳されてるとは思うんですが、
このへんは特に、フランス語のほうがすっきりしてた気がします
(もちろん、字幕はそもそも限界があるわけですが。)